フォルテールが……あれほど嫌っていたその楽器こそが、私たちの心を繋いでくれる。
確かに私は歌を失った。でも、それ以上に大切なものを手に入れた。それは私の中に最
初からあったのだろう。お父様が教えてくれた、フォルテールの中に。
これからやるべきことが、二つほどできた。
一つ目は、少し困った問題ではあったけど、この家に足りない物ができてしまった。 あともう一つ、フォルテールが必要だ。とても高価なものだし、今は市や国からの援助も 受けられない。でも、例え中古でも構わないから、私がクリスさんの隣で弾けるように、 もう一台のフォルテールが必要だった。
多分そのためのお金を貯めるのに、何年もかかるだろう。これで、クリスさんに初めてな
にかをねだることになるけど、ちょっと高価すぎる気もした。でも、クリスさんならきっと
頷いてくれるに違いない。そして、いつか二人で並んでフォルテールを弾こう。
そして、もうひとつ。これも問題が多そうだったけど、絶対に譲れないと思う。
お父様に手紙を書いてあげたかった。会いに行くって言ったら、きっとクリスさんに反対
されるだろうから。住所も書かず、ただ名前だけ。そして、今どうしているかだけを。私は
それをクリスさんに隠すことだけは決してしない。どうせわかってしまうのだから。
とにかく、今は並んで二人で一つのフォルテールを弾こう。少し窮屈かもしれない
けど、きっとその時間は素晴らしいに決まってる。
今までの時間がそうであったように。
それは、幸せな確信だった。
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